SONY ICF-M780N は DSPラジオ。

ソニーのラジオICF-M780N。
http://www.sony.jp/radio/products/ICF-M780N/

生産終了になってからアマゾンの値段も上がってプレミア価格。
SONY ICF-M780N – アマゾン
https://amzn.to/3tvHinL

商品説明では「FM/AM/ラジオNIKKEI PLLシンセサイザーポータブルラジオ」となっており非常に控えめな表現。モノラル、トーンコントロール無し。目立った特徴といえばタイマー機能くらい。

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早速分解してみた。

小ぶりな内蔵のトランス。ACアダプタが要らないのはホームラジオとしてとても良い。

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メイン基板。

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これは、、完全なるDSPラジオ。いわゆるPLLっていうラジオじゃない。IFフィルターの1つすら無くて、ダイレクトコンバージョンで復調もLSIでデジタル信号処理するタイプ。チップのブロック図とかを見るとPLL方式ですら無い気がする。Automatic frequency control(AFC)って書いてあるけどPLLの記述は無いし、受信信号に対して局発の周波数を調整しているっぽいけど、位相比較でループがかかってるというような言い回しはしてない。詳細は分からないがもはやPLLラジオですらないDSPラジオってことか。

※DSPチップのAFCとやらがPLL(位相比較のフィードバック制御)なのか、PLL以外の方法で周波数追従しているのかが不明。もしかしたらPLLかもしれないが、比較の基準になる発振器や分周器は無さそうだしデジタル処理ならやっぱり「位相比較」ではない可能性が高い気がする。信号の中心周波数やキャリアを抜き出すくらいアナログ手法な位相比較を使わなくてもデジタル信号処理ならいくらでもできそうだし。デジタル表示ラジオがすべてPLL方式だなんていう思い込みは捨てよう。(バリコン式アナログOSC+デジタル周波数カウンタなラジオだって存在するらしい→「同調方式:液晶表示アナログ同調」のラジオ)

※技術的にはトンチンカンであっても、世間は「ボタンとかでデシタル的に選局できるやつ」をPLL式、「(DSP入力VRでもOSCのVCでも)無段階のダイヤルで選局するやつ」をアナログ式、「(PLLのカウント値でも、OSCの周波数表示でも)とにかく表示がデジタル」なのをデジタル、「少なくとも復調がDSPで、アナログ復調+AF段DSP(ただの音質イコライザ)ではないやつ」をDSPって定義していると理解した。

・右側にある独立した基板はラジオの心臓部、レシーバチップが載った受信モジュール。実装されているチップ表面の表記は「3460 / DBCX / .724」で、SILICON PABS https://jp.silabs.com/ の Si4734/35 AM/FM/SW/LW ラジオ・レシーバ Si4734-D60。短波やFMステレオも実装されたDSPラジオチップ。これにマイコンのコントローラとAFアンプをつなげばラジオが完成。以前のアナログラジオはICラジオでもSONY製スペシャルファンクションICが使われててIt’s a SONYに偽り無しだったが、今どきのDSPラジオでは社外のレシーバチップが主要な性能を司ることに。

データシート
https://www.silabs.com/documents/public/data-sheets/Si4730-31-34-35-D60.pdf

・受信モジュールにアンテナを直接つながずにプリアンプやダイオードクランプが入っていて感度や安全性を確保しているっぽい。データシートの標準回路ではチップ直結でも良いことになってるが、そのへんはメーカー製品の実装。

ノイズ対策のためかシールドされているのはおそらくコントローラのマイコン周辺。半田を外さないと中が見られない。液晶表示とレシーバチップのコントロールをしているのは間違いないが、それ以上の詳細は不明。

・受信モジュール右上の「LW」表記のランドが未実装。これは海外モデルのICF-M780SL用のものだろう。

・アンテナは長いバーアンテナだがアナログラジオの同調コイルを兼ねたものではなく、単純な微小アンテナに見える。バーアンテナの左側付近に「LW」の表記があるがコイルは未実装。

コントローラ周りをちょっといじったらSL化してNIKKEI以外の短波も受信できるかなって思ったけどコントローラやファームの素性が全くわからないし、LWは部品無しでそのままでは受からないし。苦労するだけかなって思った。FMバンドが世界標準の80-108MHzになっても困るし。それ以前に素人がちょっといじって調整なんていう箇所も全く無い。

ICF-M780Nのサービスマニュアルを見つけた。驚くほど中身が無い。ACコードとマニュアルのパーツ番号しか書いてない。このラジオは電気屋ですら調整するような箇所も無い。
https://servicemanuals.us/sony/audio/icf-m780sl.html

デジタルラジオは失敗したがラジオのデジタル化は止まらない。これも時代の流れ。この性能でNIKKEI以外の短波が受かったら ICF-SW7600GR を廃番にしてもいいって思った。できればXDR-55TVみたいにホワイトバージョンも。→SW7600GRは今月で生産終了になったらしい。合掌。パナソニックに続いてソニーも真のアナログ機は終焉に向かう様子。

→さらに分解してみた。

SONY ICF-M780N その2。
https://mzex.wordpress.com/2019/03/22/13836/

この機種はラジオとしては最高の品質。選局はボタン一発、音量・音質十分で感度・選択度も最高。オンとオフのタイマーもついてて、デザイン良し。レトロなBCLラジオや真空管スーパーもいいけれど、簡単便利で高性能なDSPラジオは現代のラジオの標準として相応しい。ICF-801と比較しても操作性、感度、ノイズどれをとってもM780Nのがいい。耳障りな9kHzビートも無い。FM補完放送あたりでイメージ受信が発生しない。違うのは音質(好みの問題)と電池持ち(M780Nの電池は十分持つし、非常用にでも電池が一組あれば全く問題ないだろう)。対してICF-801はFMのイメージ受信が盛大で、AMも双峰特性が何かおかしくて同調のピークが複数になってて、粗動でも微動でもチューニングが難しい。ICF-EX5MK2と比較しても音質、FM感度はM780Nが上。AMは同期検波がないがDSP処理との差は限界ギリギリで差がでる程度というか分からないくらい互角、そもそもAM放送の受信で同期検波あって助かったという経験はそんなに多くないし、音質を犠牲にしてでもノイズに埋もれるような放送や隣接局の妨害受ける放送を日常的に聴きたいのかを問えば、どちらが良いかは答えが出る。801やEX5と比較してバックグラウンドのノイズが少ないのも良い。ICF-801もEX5もバックグラウンドのノイズがひどくてM780Nのほうがよっぽど静か。それにバリコンと減速機構だけではデジタル選局の操作性には到底太刀打ちできないわけで、バーアンテナの指向性がとか受信の高感度がとかなどマーカー発振器でもなければ十分には生かせず、微妙なチューニングで云々など足かせでしかない。現行機種でそれなにり安いM780Nは同期検波なんて無くても1ステップ(9kHz差)しかない中国国際放送1044kHzとCBCラジオ1053kHzも一発選曲、ヌル方向の調整できちんと分離できてビートも無し。プレミア価格な高評価ラジオのICF-801はこれが無理。

それにいくら高感度な受信機をもってしても受からない電波は受信ができない、そういうことはハムにとっては常識だったわけで「バーアンテナが一番長いから高感度のEX5が最高のラジオ。ラジオは高感度が命。」っていう妄信は改めた。5ちゃんねるでラジオスレ立つたびにバーアンテナの長さ一覧貼ってくれてるアレ(http://lavender.5ch.net/test/read.cgi/kaden/1465053750/4)、冒頭に2016/4/10現在などともっともらしく書いておきながら、ン十年も前に生産終了してる激古BCL機種を上位に混ぜて、お気に入り骨董品のクーガやEX5のマウントでもとってるつもりなのかな。EX5とM780Nの数センチしかない差を気にするくらいなら外部アンテナ系をどうにかした方がいい。それにバーアンテナが長いだけの骨董品家電ラジオをどうカリカリチューンしたことろで、現行のDSPな通信型受信機とちゃんとした戸外設置の受信用アンテナ上げた環境に総合感度と選択度で太刀打ちできるわけないし、まともなアンテナとスピーカを接続したステレオチューナーに音質の面で勝るかも望み薄。放送の中身を聞くより現行ラジオで楽しんでいる人を蔑むことで、お気に入りの骨董ラジオを愛でたいだけなんだろう。あとラジオにCPUでデジタル表示がノイズ源の話にならない、アナログチューンの旧機種が最高みたいなこと言う人の幻聴レビューもスルーが正解。現行のDSP機を普通に使われるような環境で試したら一発で分かるようなことをいちいち妄想でこき下ろす意味が分からない。それにAM放送はあと数年で終了して、中波用バーアンテナは犬HK特亜専用アンテナになるから、それまでに한글普通话をマスターしておけば自慢の長いバーアンテナが役に立つ。

放送を聞くのではなく、激古BCLラジオをいじって金銭・操作・時間で苦労したいのならば止めはしないし好きなようにすればいい、趣味なのだから。手軽に今の放送を聞きたいならM780Nで無問題。

この際どうでも良いが時計が正確で放置していてもずれが少なくて良い。M780SLを「Digital Clock Radio」と題しているあたりまんざらではない。

ICF-M780NはDSPチップ自体がSW/LWに対応しててもマイコンのコントローラで制御しているので、コントローラ側が対応してない限り簡単には改造できそうにないが、コントローラを使ってないタイプのDSPラジオは簡単に改造できる。ICF-506をこの方式で改造できるか試してみたい。このチップはチューニングに可変抵抗器の分圧を使うが、単に簡易な入力エンコーダとしての実装であってVCOや周波数コンバータの内部回路に直接働きかけるようなものではない。(抵抗の分圧回路→A/D→ポジション検出→周波数変換器、DC受信機の受信周波数確定てな感じ)

Panasonic RF-P155を改造して短波放送を聴いてみる。
https://mzex.wordpress.com/2018/08/06/13201/

→P155とは違って、ICF-506はSW機能無しのSi4831なので短波化は無理っぽい。同一形状で同一ピン配置のSi4835に張り替えられれば短波対応できそう。この手のラジオはきょう体とスピーカーが勝負だからチップ張り替えやアンプ交換も改造手法としては有りかも。Si4831のままでもステレオ化、トンコン機能追加、外部アンテナ追加とかいろいろできることはある。
https://www.silabs.com/documents/public/data-sheets/Si4831-35-B30.pdf

SONY ICF-M780N は DSPラジオ。」への4件のフィードバック

  1. ピンバック: の回想録

  2. ピンバック: の回想録

  3. ピンバック: の回想録

  4. ピンバック: ナムウィキ/ソニーラジオ からICF-M780Nのレビュー – の回想録

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