ATUのアースをどうしたらいいのかわからない-解決

前回はエレメントの電気長が不明なものとしてアンテナアナライザのインピーダンス表示をもとに電圧給電・電流給電を見定めたが、追試としてエレメント長が分かっているものとしてVSWRの変化を見てみる。

寒くて外に出るのが面倒なので室内でできる範囲で確認する。手持ちの6.66mのワイヤーをエレメントとして、同じ長さのワイヤーをラジアル線として使用する。波長短縮率を5%と仮定すると、電気的長さは5%長くなるので6.99m(約7m)となる。ワイヤーの長さを変更するのは面倒なのでアンテナアナライザの周波数を変更することでアンテナの形式を変更する。例えば7mのエレメントを1/4λで使うなら12.8MHz、5/8λで使うなら26.8MHzというぐあい。

いろいろな形式でラジアル有り、無しで得られる最小のVSWRを測定した。

最初の二行、1/4λと3/4λだけが電流給電でラジアルを必要とする接地型アンテナ、あるいは不平衡50Ωをバラン無しで直接接続したダイポール、三行目以降は電圧給電のエンドフェッドアンテナになる。

・1/4λ、3/4λは完全な電流給電となり、接地型アンテナ(GPアンテナ)として見立てるとアース側の線はラジアルとして、不平衡ダイポールアンテナとして見立てるとアース側の線がカウンターエレメントとして機能することで給電点のインピーダンスを下げていることが分かる。アンテナエレメントの根本に触れてもVSWRの変化は少ないが、ラジアル線が無くなると途端に不安定になり、VSWRも測定限界以上になった。

・1/2λの完全な電圧給電ではVSWRを十分下げることができなかった。給電点のインピーダンスがアンテナチューナーの整合範囲を超えている可能性がある。なんとかVSWRを下げたポイントではラジアル線の影響をあまり受けないし、無いほうがVSWRを下げられる。

・1λの電圧給電では1/2λよりVSWRを下げることができたが、1.0付近までは下がらなかった。これも給電点のインピーダンスがアンテナチューナーの整合範囲を超えている可能性がある。1/2λと同様にラジアル線の影響は少ない。

・1/2λ×Nより1/8λだけ短くした形式の3/8λ、7/8λはラジアルが無いとVSWRを下げられるが、ラジアルがあると全く下がらない。ラジアル無しの状態でもボディエフェクトは少ないが、アンテナエレメントの根本に触れるとVSWRが大きく変化するので電圧給電となっていることが分かる。分布定数回路としてみるとエレメントのより外側--つまりチューナーの内部に向けてより電圧分布が大きくなるっていくはずで、チューナーの動作としては厳しいことが予想される。このことから1/8λ短くした形式は適切ではない。

・1/2λ×Nより1/8λだけ長くした形式の5/8λ、9/8λは安定して動作する。どちらの形式もラジアルの有り無し、ボディエフェクトの影響が少ない。さらに0.5/8λ長くした9.5/8λはラジアル無しのVSWRを十分下げられるが、ラジアルを付けると受ける影響は9/8λより少し大きい。

電圧給電はアースの影響を受けにくいことが分かったが、1/2λ、1λなどハイインピーダンスになる最高点付近ではチューナーの整合範囲を超えてしまうのかVSWRを十分下げられないから、市販のノンラジアルアンテナがやってるように1/8λ延長してインピーダンスを少し下げるのが有効。今回試した中では5/8λ、9/8λの形式が調整のしやすさとアースに影響されにくい安定性を有していた。チューナーの調整は完全ではないので実際の運用に使うアンテナの製作時はエレメント長やマッチング部をもう少し調整してVSWRを下げる必要がありそう。

今回試した形式のベースになるアンテナの電圧分布。5/8λ以外の形式は同じ実効長を持つので理想的に動作する場合の感度はすべて同じ。ただ、モノポールの接地が不完全だとか、L型ダイポールのラジアルからの放射を遮っているとかだと実効長は最大で半分に減少するかもしれない。

5/8λは実効長が1/8ぶんだけ長くなるわけで、1/2λダイポールより指向性方向への感度が向上することが期待できる。9/8λはもっと実効長が長くなるので、より高感度が期待できるが、1λを超えてくるとサイドローブでパターンが乱れてくるので9/8λあたりが素直に使える上限だと思う。



いろいろ試してみたらATUに接続するエレメントとアースの方向性が見えてきた。

・エレメント長
主目的にしたい周波数の5/8λ、9/8λで設定。
物理的に制約がある場合は1/4λ、3/4λで設定。
9/8λ、3/4λは放射パターンが無指向性ではなくX字方向に近づく。
送信帯域が1/2λ×Nをまたがないようにする。
+1/8λより1/2λ×Nに近くても良いがチューナーの整合範囲内にとどめる。
-1/8λは高電圧部分がチューナー内部に入り込む形になるので不適。
放射パターンがクローバー状になるのを気にしない、あるいはローブ方向のゲインが欲しいなら1/8λ+1/2λ×N(N≧2)、1/4λ+1/2λ×N(N≧2)でも良い。

・ラジアル線
5/8λ、9/8λ動作させたい周波数の1/4λラジアル線は付けない。
1/4λ+1/2λ×N動作になる周波数に対応する1/4λのラジアル線を必要な本数追加。
1周波数帯につき1本。必要があれば帯域幅に合わせて長さを変えたものを1~2本追加してもよい。
動作の根拠が不明なラジアルは付けない。
電流給電時のラジアル線はGPアンテナのラジアルやDPのエレメントのように空中線として扱う。床などに雑に散らしておく場合は実効長が最大半分(電力比で3dBダウン)になるものと考える。→これに影響されたくないなら電圧給電にする。


これらをすべて満たす1本のエレメントと、何本かのラジアル線を選び出すのが最適解なんだけど、計算するのが面倒なのと理屈ばっかりであまり現実的でない気がしてきたので、使いたいバンドからエレメントとラジアルを作って使えないバンドを特定すると良い気がした。

・メインで出たいバンドを決めて5/8λ、9/8λでエレメントを作り、それ以外のサブで出たいバンド用に1/4λ+1/2λ×Nのラジアル線を複数つなぐ。ラジアル線はNの数で共用可。
・メインで出たいバンドのエレメントを1/4λ+1/2λ×Nで作ったら、そのバンド用にラジアル線も1/4λで作る。サブで出たいバンド用に1/4λ+1/2λ×Nのラジアル線を複数つなぐ。
・エレメント長から逆算して1/8λ±1/2λ×Nに該当したらラジアル線はつけない。
・エレメント長から逆算して1/2λ×Nに該当したバンドは送信しない。

今回得た知見はエレメントの長さは1/4λだけでなく実効長がより長い5/8λ、9/8λを選択できることと、1/4λのラジアル線を付けない条件が明確になったこと。

ATUのアースをどうしたらいいのかわからない-解決」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: ATUのエレメント長を再検討する。 | の回想録

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