DX-SR9でDRM放送を受信。

試行錯誤していたアルインコの名機DX-SR9を使ったデジタル短波放送DRMの受信。ようやく音声のデコードに成功した。

使用環境
・受信機 Alinco DX-SR9M FW1.07 + アンテナ EDX-3 + 室内設置ロングワイヤー3.5m
・パソコン HP ENVY14 Windows11 Professinal 64ビット版
・サウンド Creative SoundBlaster Digital Music PX
・SDRソフト Dream 1.13
・受信日時 2021年11月28日 11:50 JST
・放送局 中国之声 17830kHz

受信方法
1.サウンドアダプタのLINE-INにSR9のIQ出力を接続。
2.サウンドアダプタの入力レベルを「32」に設定。
3.SR9の受信周波数を17824.80kHzに設定。(放送周波数-5.2kHz)
4.SR9の受信モードをSDRに設定。
5.Dreamを起動、入力デバイスと出力デバイスを設定。
6.ある程度デコードが進むとチャネルが選択できるようになるので1のaac Monoを選ぶ。
7.MSC(Main Service Channel)のデコードに成功すると音声が出てくる。

これで長いときは3~5分程度連続して受信ができた。音声はエラーのためにデジタルなノイズ混じりだが、女性アナウンサーが喋っている中国語であることとBGMが鳴っていることは判る。SR9でのDRM受信が難しいのには理由があって、SR9のIQ出力の周波数特性がフラットでないことと、サウンドアダプタの下限周波数が0ではないことが主な原因。

SR9のSDR機能のうたい文句では帯域幅が48kHz以上と表現されるが、これはSDRソフトのKG-TRXがL+RでIQ信号の両側を利用しているためで、dreamなど通常のSDRはサウンド入力を単純にIF入力として扱うため+24kHz側のみをIFとして扱うことになる。もっともSDRソフトがIQ両側を利用できたとしても、サウンドアダプタの下限周波数付近はまともに扱えず24kHz連続ではなくて中央部分が欠けてしまうから、DRMで使われるOFDMでは受信周波数を中央に持ってくることはできない。けっきょく片側の帯域に収めてデコードにかける必要がある。しかも+24kHzの帯域といっても周波数特性はフラットではなく、7kHzくらいから徐々に低下して12kHz付近では-20dBって感じだから、まともにフラットなのは8kHz未満ってところだと思う。アマチュアの狭帯域デジタルみたいに帯域幅3kHz/6kHz以下ならこれでも良いけど帯域幅10kHzのOFDMみたいな広帯域デジタルだとエラーが多くなる。

そもそもKG-TRX以外の動作を保証していないSR9の仕様に文句を言っても仕方がないので、できるだけデコードに成功できるやり方を考えると、SR9はSDRモードに切り替える直前の受信周波数がIQ出力の下限周波数=0Hzになるので、これを+側にオフセットさせる必要がある。DRMの帯域が10kHzなので受信周波数を放送周波数の-5kHzにしてやれば0~10kHzに収まって良いのだが、0Hz付近はサウンドアダプタ側の下限にひっかかって取り込めないのでさらに200Hzオフセット。合計で-5.2kHz下げて17824.80kHzを受信状態でSDRに切り替えればDRM放送の信号がIQで200Hz~10.2kHzの範囲に収まる。下限はサウンドアダプタの特性に、上限はSR9の特性に阻まれるようなイメージ。このへんは環境や個体差に依存するから試行が必要。ただし、どんな環境であってもベストポジションがあるのは-5.0kHz~-7.0kHzの間のはず。次のIC-R8600の画面からイメージできると思うが、-5.0kHz未満ではOFDMの一部が欠けるため不可。

放送周波数の中心。前後5kHzに信号が分布する。
帯域の下限より少し下からIQに現れるようにする。

あと入力レベルも結構シビアで大きければよいというものでもない。むしろ小さすぎるくらいのほうが好結果。自分の環境では入力レベル30~36なら比較的スムースにデコードが進む。この数字自体に意味は無くて相対的な値だからこれも試行が必要。

ちなみにSR9にコリンズメカフィルを装着しているがIQ出力はIFフィルタの入力側を分岐して取っているので関係なし。標準のムラタセラフィルでも変わらないはず。

DX-SR9でDRM放送を受信。」への6件のフィードバック

  1. こんにちは。
    編集前ご覧になっていたんですね。最初は「OFDMのビンがQAMだから位相特性も影響があるかも」と書いたんですが、位相特性の影響がどの程度か分からないので書き直しました。SR9はスーパーなアナログ機なので、R8600やUSBドングルのダイレクトサンプルなSDR機と比べるとQAM系の信号は苦手かもしれません。

    当初SR9でDRM放送受信はあまり考えてなかったのですが北村様に質問されてから試してみて理解が深まりました。ありがとうございます。
    SR9は最新のSDR機と比べていろいろとポンコツですが、このアナログ感は良いなと思います。それ故素性を掴みやすく、そしてユーザの技量を試すあたり、私がこれを名機としたい所以です。最近はR8600よりSR9でBCL/SWL受信している時間のほうが長くなってます。

  2. mzexさん、こんにちは。

    確かにDreamのスペクトル表示で、ご説明通りだということが見て取れますね。
    (私は見ておりませんでした...)
    DRM放送をSDRドングルなどで受信している人のスペクトルを見てみましたが、R8600に近いスペクトルが表示されていました。

    と、ここまで書いていて
    昨日コメントを読んでいた時にOFDMの変調についても記述されていて、また頭をスッキリさせてからと思って今日もう一度読んでみると...私の勘違いかな???

    SR9の変更申請が通過したそうで、既に同じ周波数・電波形式・空中線電力の局免があれば名機をを堪能することができるようですね。
    簡素化されたデジタルモードの手続きに関してのポイントも拝見しました。

    私がDRM放送についてお聞きしたことで、色々とお調べ下さり本当にありがとうございました。
    おかげさまで大変勉強になりました。
    他にもアンテナケーブルの引き込み方法も興味深い記事ですので、じっくりと勉強させていただきたく思います。

  3. こんにちは。稚拙な説明をなんとかご理解いただけたようで幸いです。

    SR9のIQ出力の周波数-ゲイン特性はDreamのスペクトル表示からの推定です。中国之声の画像でも出している通りで、DRMのOFDMスペクトルはR8600の画面のピークホールド表示のように「台形」のはずなのに、SR9からIFを取り込んだDreamの表示だと右肩下がりに傾いてしまってます。この傾きはKG-TRXの公式ダウンロードページの画像やKG-TRXを使用している人が掲載している画像のスペクトル表示でも同様で、どのような環境でもノイズフロアが傾いて見えるのは、SR9のIQ出力特性がこうなってるからと解釈できます。(今どきのサウンドアダプタはもっとフラットだし、R8600の12kHz IFも完全な台形にならないとしても、ここまで傾かない。)

    まあDreamの表示ではそこまで正確には読み取れませんが、傾きから-3dB(カットオフ)が6~7kHz付近にあって、その先のノイズフロアも下がり続けるものの、信号自体は20kHz付近まで伸びていることが分かります。ノイズフロアだけの画像だと分かりやすいので、素材が採れればまた掲載します。

    ちなみに本日、SR9の変更申請が審査完了になりました。

  4. mzexさん、おはようございます。
    大変丁寧な解説をありがとうございました。

    「dreamなど通常のSDRはサウンド入力を単純にIF入力として扱うため+24kHz側のみをIFとして扱う」ということが前提になっており、その+24kHzの帯域も0から+7kHzくらいまでは比較的フラットだけど、それより先は徐々に低下して+12kHz付近では-20dBということですね。
    よって10kHzの帯域をなるべく低い方(0Hz)にしたいが、サウンドアダプタの関係でさらに200Hzオフセットしたということで理解できました。

    私は+24kHzのみを取り込むということが頭に入っていなくて、10kHzだけが独り歩きしていました。
    試行錯誤が必要ですが、サウンドアダプタの入力特性を考慮しつつDRMの帯域を低い方にオフセットするのがよさそうですね。

    ご回答をいただいてすぐに拝読したのですが、頭が混乱してしまいましたので睡眠をとってスッキリしたところで再度読み返して理解できました。
    ちなみにSR9のIQ出力のゲインですが、スペアナ等で測定されたのでしょうか?

  5. 木村さんこんにちは。
    -5.0kHz~-7.0kHzの間の記述は受信したい放送局の中心周波数に対する、SR9のSDRに切り替える直前の受信周波数のことで、放送周波数中心に対するオフセット量です。

    放送周波数(中心) 17830kHz
    放送周波数(帯域) 17825kHz~17835kHz(10kHz幅)

    SR9の(SDRに切り替える直前の)受信(表示)周波数
    17830kHz-5.0kHz=17825kHz ~
    17830kHz-7.0kHz=17823kHz

    IQ(IF)に現れる放送帯域周波数(帯域)
    17825kHz受信時(-5.0kHz) → 0kHz~10kHz
    17823kHz受信時(-7.0kHz) → 2kHz~12kHz

    この-5.0kHzはオフセットの下限です。これよりオフセット量を少なく(-4.8kHzとか)するとか+側にすると放送帯域が欠けてしまうので絶対に失敗します。オフセット量を-方向に多くする場合の上限に特定の値はありませんがSR9のIQ出力の周波数特性に依存します。

    とにかく10kHzある放送帯域をPCに歪なく取り込むのが目的なので、放送帯域の下限が0kHz付近では確実に取りこぼしてしまうため-5.0kHzきっちりではダメで、またSR9のIQ出力が高域の10kHz以上では特性が低下してくるので上限が12kHz以上でもうまく取り込めません。
    PCのサウンドアダプタの入力の特性やSR9の個体差があるため、自分環境ではたまたま-5.2kHz~-5.4kHz付近だとデコードしやすかったということです。

    総務省も送信部分の基板を撤去してくださいは名回答でしたね。
    マイク外しておくだけはNGというのは有名です。仰る通りSR9もマイクなしで電波が出る操作がいくつかあります。
    無線局は終段管の名称と電圧と変調方式で出力を推定して(総通が)免許してるんだから、終段管が無いか電圧が0なら出力は嫌でも0Wなんで、「送信部分から終段管(ファイナル素子)を撤去してください」が妥当だと思うんですけどね。まあ、誰でも問題なくできることでもないし、管轄官庁の意見として受信だけなら受信機でっていうのは妥当かもしれませんね。

  6. DRM放送の受信成功おめでとうございます。
    先日はSR9について詳しく教えて下さりありがとうございました。
    今回も大変わかりやすい解説でしたので、技術力のない私でも理解することができました。
    ここまで詳細にわたって記載されているのは(詳細でなくても)初めてです。
    しかし一点だけわからなかったのが「ベストポジションがあるのは-5.0kHz~-7.0kHzの間」と記述されていますが「17830kHzを中心として-5.0kHz~+7.0kHzの間」という意味でしょうか?
    私の解釈が間違っているようでしたら、お手数ですが解説いただけるとありがたく存じます。

    余談ですが、「トランシーバーを受信のみに使用したいが、容易に電波を発射できないようにとは具体的にどのような処置をすれば良いですか?」と総通に聞いてみました。
    ご担当の方が仰るには、マイクを接続していなくてもキャリアが出ることがあるのでダメだそうで、具体的には送信部分の基板を撤去してくださいとのことでした。
    大変親切にお答えいただき、最終的には受信機を買って下さいということで落ち着きました。
    mzexさんが書かれている「3アマか2アマにステップアップしてこの名機を堪能しよう。」という記事を思い出して思わず頬が緩んでしまいました。

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