穴をあけずにロングワイヤーアンテナを設置したい。

ATU+ロングワイヤーアンテナを設置したい。でも家に穴をあけたくない。

すきまケーブルも能がないから、窓ガラス自体を使うことにした。90年代でも車のリアウインドウに貼り付ける「ウィンドウマウントアンテナ」みたいのがあった。貼り付ける台が結合装置になっててケーブルを通さなくても電波の送受信ができる。便利そうだけど流行った感じはないし、第一電波のは生産終了。特許検索すると似た感じのものはいろいろ出てくるが、ほぼ車両の放送受信用アンテナか、UHF以上のTV受信および移動通信アンテナ。短波の送受信用ってのは海外も含めてやってる人が居ないか調べてみたがリサーチが足りないのか見あたらない。

穴を開けたくない以外に、手軽にマルチバンドで出たいという要求もあり、それを叶える選択肢としてブロードバンドアンテナがあるが、前回開局時に使ったときはさんざんで結局分解することになった。

ブロードバンドアンテナを分解してみた

その時得た知見としては、アンテナはエレメントを共振させるほうが効率よくエネルギーを空間に放射して受けることができるという当たり前のこと。ブロードバンドアンテナは10dBを熱として消費することでVSWRを2以下にしているが、ATUを開放端エレメントで使う場合は共振しているからブロードバンドアンテナよりは効率よく送受信ができるはず。

今回設置したいのは短波用のATU+ロングワイヤーなんで、エレメントの中間を”窓で構成したコンデンサ“で電気的に透過させる。他では同じようなものが見つけられなかったし、世界初かもしれないから「TYKスタイルアンテナ」と呼称しよう(大袈裟)。概念図としては次のような感じ。

銅板二枚を極板として窓ガラスを挟んで構成したコンデンサをロングワイヤーのエレメントに割り込ませる。ATU、RFアース(ラジアル)は室内に置く。これで建物に穴を開けることなく屋外にエレメントを伸ばせる。屋外のエレメントは屋根を使って上方向に伸ばしても良い。※構想では20mだったが、実際に設置した外側のエレメントは10m程度。

窓のコンデンサは回路的にカップリングコンデンサみたいなものだが、ローバンドや中波受信にも使いたいし静電容量がある程度必要になるからちょっとだけまじめに検討する。中波ゲルマラジオの電灯線アンテナには100~200pFを挿入してたし、手動のアンテナチューナーや例の人工RFグラウンドでも280pFを使っている。これらのことから、窓コンデンサの容量は100pF~200pF以上を確保したい。

静電容量の目標を200pF以上、ガラス窓の厚み4mm、比誘電率を6 (ガラスの比誘電率は5.4~9.9)として、計算できるところで極板の面積を求めてみると20,000㎟で260pF以上になるらしい。手持ちの銅板(厚さ0.3mm、普通のハサミで切れる)の幅が200mmなので100mmの短冊にするとちょうど20,000㎟。銅板そのままだと酸化するから表面保護テープで覆って端子部分はハンダメッキ。

実測で280pF程度。計算値と10%未満の差で、まずまずの出来。


これを窓に貼り付けたら、近くにATUを設置して室内側の極板にATUのアンテナ端子を接続、屋外のワイヤーエレメントの一端を屋外側の極板に接続。ATUのGND端子は3mや6mくらいのラジアル線を接続。ラジアル線はバンドごと1/4λの線を複数用意してもよいが、人工RFグラウンドを使うと1本でも良いのですっきりする。

窓のコンデンサはライデン瓶と同じ「ガラスコンデンサ」で、窓枠から離して乾燥した状態なら200Wくらいなら耐えられるはず。アンテナ系としては短縮コンデンサとして機能するが、細かい調整はせずとも余分なリアクタンス成分はオートアンテナチューナーが帳尻を合わせてくれる。

良いところ。
・建物に穴をあける必要がない。
・屋外の設備が単純。
・機器類を室内に設置できて劣化が防げる。メンテナンスしやすい。
・短縮コンデンサの働きで実効長が増加(するかも)。
・調整はATUにおまかせ。
・保安用アースに壁コンセントのアース端子が使える。
・エレメントにトラップや位相器が無く、室内の給電部を自由に変えられ中波/短波受信アンテナとしても使いやすい。

悪いところ。
・窓コンデンサで損失が生じる。(推定最大1dB程度) ※後述
・室内の電界が強く建物内の機器にインターフェア(障害)が出やすい。
・室内のケーブルや機器類の高周波電圧に気を遣う。
・多少ずれる程度なら大丈夫だが、運用中に極板が外れないように注意。(今どきの無線機なら高VSWR検知でパワー抑制される)

使用上の注意。
・二重ガラスは静電容量が足らない(ガラス3㎜、空間6㎜のペアガラスなら極板20,000㎟で推定25pF程度)。線入りガラスや金属蒸着ガラスは不明。
・ATUとケーブル類の周囲は電波防護の観点から送信時に近づかない。感電や放電に注意。
・放電や発熱など異常がある場合は送信を停止して確認。
・無線機や家電への回り込みに注意。ラジアル線からも電波が出る。

バリエーション。
・もう一つコンデンサを作り、RFアース(ラジアル線)も外に出す。(アンテナ側とは離す)
・もう一つコンデンサを作り、ダイポールのエレメントにする。
・磁石でコンデンサを固定して取り外しやすくする。
・銅板をアクリル板やガラス版に載せて密着性を確保する。
・増設用極板で静電容量を増加しローバンドの損失を減らす。
・ハイバンド中心なら極板のサイズを小さくできる。(13cm×13cmで100pF程度)
・ATUではなく1:9バランで整合する。
・チューナーの可変Cの範囲を超える場合は窓Cの容量性リアクタンス補償として、余長で数ターンのコイルを構成するとチューナーの可変範囲に収まりやすくなる。バンドによりインダクタンスは要変更。

カードやビューローの準備ができてなくてCQ出したくないのに送信もしたいから世界のWebSDRを聞きながら慣れないCWを送信。国内は北海道から九州まで、海外も台湾、インドネシア、ロシアのイルクーツク、西オーストラリア、アメリカのアイダホ州・ハワイ州でも信号を受信できた。数千kmの伝播をリアルタイムで確認できるとは、さすがインターネット。それに10/14MHzの伝播特性もすごい。こんな簡単な設備で太平洋をたいした苦労もなく越えられるとは。

※窓Cの損失についての考察:
窓Cの容量を200pFとして、コンデンサのある位置のエレメントのインピーダンスがZ=200Ωならカットオフ周波数(-3dB)はfc=398kHz、このとき1.9MHzでの損失は1.6dB、10MHzで0.34dB。Z=400Ωならfc=198kHzで1.9MHzでの損失は0.86dB、10MHzで0.17dB。すきまケーブルの挿入損失は0.5dB程度だから、窓Cの挿入損失もそこまで悪くない。周波数が上がると挿入損失が減ることは感覚的にわかるが、窓Cの位置のインピーダンスを高くすることでも挿入損失が減る。(損失は簡易計算値で位相やタンデルタ、極板の純抵抗、放射などは考慮していない。)

最初ロシアに届くことを確認したときはATUを使わないバリエーションで試していた。

屋外は一切触らず、屋内が全く違う構成。ATUは使わず、手動アンテナチューナーの出力を中国製安物1:9バランを経由して外のエレメントに導く。こうすることで手動アンテナチューナーを手元で操作でき、窓のコンデンサ付近まで普通の50Ω同軸ケーブルを使って配線できる。(入手しにくい平行フィーダーを使いたくない)

人工RFグラウンドをアンテナのラジアルとしては使わずに機器保護用として接続。ラジアルに相当するものは1:9バランのGND端子に接続。周波数によって同軸のシールド側にRFが乗ってしまうため、人工RFグラウンドで短いRFアースに逃がす。この人工RFグラウンドも手元で操作できる。人工RFグラウンドが無ければ十分な容量のクランプコアを1:9バランのIN側に装着すると良いかもしれない。

1:9バランがインピーダンスを高い側に変換してくれるのでアンテナチューナーの可変範囲は直下ATUのように広くなくても済む。これならリグ内蔵ATUでも整合できるかもしれないし、もしかしたら1:9じゃなくて1:4のが良いかもしれない。屋内の電極板だけ貼り換えれば、寒い屋外に一歩も出ずに違う構成に組み替えられるのは手抜きができていいと思った。

もっと送信して評価してみた。
https://mzex.wordpress.com/2021/12/17/19428/



ついに南米に到達。受信局はKiwiSDRのLU1HCWでアンテナは40m/20mバンド(7MHz帯/14MHz帯)ダイポールと極めてシンプルな構成。こちら側がATUと6.8mラジアル線だけでも十分で、50Wならフェージングがある以外は国内の遠距離とさほど変わらないくらいに聞こえるし(-104dBm前後~最高-97dBm、ノイズレベルは-127dBm~-122dBm程度)、SSBでもコールサインを判別できる。ATUに人工RFグラウンドをつけてきちんと調整したら10WでもCWはそれなりに入っている。地球を半周した信号ってこんな風に聞こえるのか。電波ってすごい!

18,000km超!
14MHz(20mバンド)のCW

その後、LU1HCWのKiwiSDR相手にいくつかの条件を試したところ、50Wでも10Wでも日中は14MHz、18MHzで安定して入感する。信号を確認できない日のが珍しい。チューニング中(10W送信)の信号も聞こえるし、1W送信で信号を確認できることも多い。エコーが聞こえれば対蹠点効果であることが分かるのだけど無理かな。

穴をあけずにロングワイヤーアンテナを設置したい。」への6件のフィードバック

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